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レベルを上げて衝撃波で倒せばいい

さて皆さん、今週は少年マガジンをコンビニで見かける事が少なかったとは思いませんか?少なくともぼくの地元では
古本屋まで全滅というとんでもないレベルでした。そう、今週のマガジンには今をときめく諌山創先生原作にして
巨匠・皆川亮二先生を作画に迎えた怪作「the Killing Pawn」が掲載されていました。ソレがマガジン品薄の
原因になっているかはさておき、今日はソレについて色々と語ってみます。

そもそも話題だからって何をお前ごときが食いつくのかと言うと単なるレス乞食だからもとい、本作が”話題の諌山”作品であることと
格上の皆川先生を作画のみの担当にしている”ということから「ハイハイ巨人商法巨人商法」「諌山調子のんな」みたいな扱い
受けている部分がそこそこあることにフツーに憤りと失望を覚え、ちゃんとした解説を加えることで少しでも虚飾に囚われて
本作を批難する意向が減ればと思った次第です。そんなわけで興味が続く方は格納先へどうぞ。



まず単純に、本作は少なくともぼくには大層面白かったです。立ち読みしてて吹き出すほど笑ったのは本当に久々でした。
一番目を引くのは諌山先生独特の、いわゆるシリアスな笑いを皆川先生の人間臭くて上手な絵でさらにブーストしているところで
間違いないでしょう。主人公アユムが、まるでスプリガンの発剄やARMSの高振動衝撃波のような威力の衝撃波
物理的にプロ棋士を打ち倒し、病院送りにしていく姿は不条理そのもの。最後のライバルを打ち倒した後、
天国のお袋さんに勝利を捧げるようなやり遂げた顔で警察にとっ掴まっている姿までもが最高のギャグでした。
否定派の方々の多くはこの辺から「将棋としてちゃんとしてない」「ゲームや競技を玩具にするな」
「テニヌやバヌケみたいに”ス”が入ってないから上手くもじれない」といった意見をこぼしているようですが、とても残念な物の見方を
しているとしか言いようがありません。

なぜなら、本作はこの短い一本ぶんの話の中において
「このマンガは将棋のマンガではありません」
ということを雄弁に語っているからです。

まず第一に、アユムが自前特製の将棋盤と駒を持ち歩いている点。
アユムは腕力のみで衝撃波を生み、さらにその威力に耐用し、衝撃波事態を増幅するための特製品なのです。
つまり、アユムは独自の将棋の腕前を持つ以前にそもそも将棋の形をした暴力を自覚して相手と戦っているわけです。
翻せばもしかしたら、どういう理屈なのかアユムは将棋盤と駒がなければ衝撃波を出せないのかもしれません。そこまで考えさせられると
よりいっそう本作の香ばしさが増しますね。そもそも自前の道具で戦法を作って戦ってる時点でイカサマに等しいのが笑えます。

次に、口さがない人がもっとも槍玉に挙げた「アユムがニ歩を打ってしまう」シーン。
これが将棋マンガとしてちゃんとしてない、所詮諌山などと鬼の首を取ったように語られる始末なのですが、この直後
アユムは自分の節を曲げて盤をちゃぶ台返ししてプロに叩きつけ、最終勝利(物理)をもぎ取っています。
『俺のニ歩は―――威力二倍だ!!』というセリフの無駄な熱さもイカしたイカレっぷりですが、
大事なのは、ここでアユムが速攻で勝負としての将棋を文字通り投げている点です。

そう、アユムはそもそも将棋にかこつけて衝撃波が打てるだけで、将棋のルール知らないっぽいんですよね。
ココに気付いた瞬間自分の中で本作の株が爆アガリしました。
将棋サロンに通い歩き、特製の道具まで用意し、予告勝利宣言までして相手を狩っていた割に棋士として第一歩目から間違っている
しかもこの曲面でニ歩を打つまでそのことに気付いていないという不条理。

テニスのルールに乗っ取らないからテニスではなくテニヌと呼ばれ、別物扱いされる。
バスケのルールに乗っ取らないからバスケではなくバヌケと呼ばれ、別物扱いされる。
文字通り生命を賭けた対局中に地獄で鬼退治を始めたにも関わらず麻雀漫画扱いされる。
なぜこの3つを例に挙げたのかは自分でもまったく分からないので集英社さんと許斐剛先生と藤巻忠俊先生と
竹書房さんと福本伸行先生に謝る必要はない
のですが、それはさておき、キャラクターが将棋のルールに乗っ取ってない、そもそも
主人公のアユムはおろか原作の諌山先生からして既に将棋のルールを知らない(作者コメントより)という時点で本作を
将棋マンガとしての枠にはめて採点するのは間違いというものでしょう。本作は将棋の形を引用しただけのバトル風ギャグマンガなのです。
アユムが馬鹿で衝撃波さえ打てれば、たとえ囲碁だろうがオセロだろうが月面でヒトラーと戦おうが何でもいいのです。

まぁそんなわけで作品の根底に対する解説はこの辺にするとして、後は個人的にツボにはまった小ネタを幾つか紹介しましょう。

まず全体のスピード感溢れる展開。さすが長年週刊連載でSFバトル漫画を連載し続けた皆川先生のコンテ能力というところでしょう。
余計な設定を一切感じさせず、アユムが物理的に勝利を収めていく点だけをズバズバ描き出していくので、ついつい
ちょっとハデな将棋マンガと勘違いしがちですがそうではない、これは皆川亮二という作家の究めつけの才能の不法投棄・
実力派ベテランの有効悪用なのだ
と気付いてこそ本作の面白さがぐんと増すのです。連勝中のアユムの風景の中にちょっぴり
「対戦相手内臓破裂で病院送り」といった新聞の見出しが挟まれたりする辺りが素晴らしい。
しかもこの新聞、ある意味オチの伏線になっています。

敵のプロ棋士がやはり色々おかしいところもイカしてますね。
「アユムのとはちょっと原理が違うがやっぱりすごい衝撃波」を出せることに始まり、アユムの技の原理を正確に見抜いている割に
技への対抗策が雑誌を腹に巻くという安っぽい装備だったり、同じ力技の使い手だから同類なのかと思いきやネチネチした打ち筋で
格下をいじめてくるしょっぱい棋士だったりと、とてもイイキャラです。そしてこういった説明をキッチリやってくれるサロンの店員さんや客たちも
ベタですがさりげなくいい味を出しています。

個人的に一番吹かされたのは、実はアユムの亡きお袋さんの存在だったり。
「続けていればいつかビッグになれるよ」とアユムを励ましながら逝ってしまわれたようですが
「えっ?『続けていれば』ってことはあなた倅のやり口知ってて応援してるの!?」
と気付いてしまうと、一番のシリアス要素に見えたお袋さんの存在が一番馬鹿らしさをブーストしてるんだなぁと理解でき、
一周回った笑いがジワジワ込み上げて来る。

そして最終的に「ビッグになってしまった」アユムで締めるわけですが、やり方はどうあれ勝ち続けることで新聞に載り、実力者の方から
挑戦されるなど、諭したとおり確かに将棋(?)をやり続けた結果、順調に名が知れてある意味ビッグになっていってるんですよ。
最終的に国家権力に目をつけられて御用になり、明日以降のワイドショーや新聞でアユムがさらにビッグに扱われるかと思うと、
笑うと同時に「見事な展開だなぁ」と唸らされるわけです。

ことほど左様に、思い付きのバカ騒ぎをやっているだけの内容に見えて、実はそのバカを究めるために細かい所まで考えては
無駄を殺ぎ落とし…と、けっして思いつきだけでは完成しないレベルの作品になっているのが本作の最もすごく、そして解り難い美点だと思います。よく言われる「本当の本当にくだらない面白さはバカでは考え付かない」を地で行く内容でした。

さて、ここまで読んでくれたヒマな方々の中には「マンガ一本に考えすぎ」と思った方もおられるでしょう。それはその通りかもしれません。
しかし、世の中にはぼくのようにナチュラルに考えすぎることで人並より楽しみを享受している人もいるのです。
そこに理解を示さず、上っ面の平均部分までを読み込んだ程度で「アレがコレが違う、だからダメ」と喧伝するのは良し悪し以前に
とてもつまらないことではないでしょうか。しょせんマンガですから、どう読もうと、どう感想を抱こうと個人の勝手なのは同意できますが、
感想を述べるならできる限り人に納得してもらったり、好ましい共感を抱いてもらえるように作品を読解したいものです。

ともあれ、久々に内容の濃い作品を読む事ができました。驚異の新人と大ベテランの狂ったコンビに感謝です。
元々皆川先生の作画はとても人間くさいせいか時にシリアスな時でもキャラが妙にブサイクで愛嬌があったり、マヌケな顔を
おッぴろげているコマがあってそういうところまで含めて大好きだったのですが、そのへんの持ち味というかクセを諌山流のシリアスギャグで
見事に本式のギャグに高めてくれたのには喜びすら感じます。

今回のタッグはどういう形で組まれたんでしょう? もし諌山先生から
「こういうことをやるなら皆川先生にお願いできれば最高だ」と考えての逆指名があったとしたら、もう諌山先生のセンスを疑えませんね。
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