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これは魔法少女ですか? はいいいえ千翼長、ゾンビです。

周囲からのススメでまたラノベ読んでみた。
「妹がゾンビなんですけど!」(著・伊東ちはや PHPスマッシュ文庫)

ええまぁ、普段のぼくなら表題に「妹」の字が躍っている時点で脳髄へとけたたましいアラートが
触手責めのように襲い掛かって
「ふぁあああああんっ! あああああぁん! ちくびらめらのおおおっ♪」(『悪魔と俺。』的悲鳴表現)
とばかりに逃げ出すのですが、中身をチラ見した時に「あれ? 案外イけね?」と
トチ狂ってしまっ天啓がひらめきついに購入。

端的に評するなら
「娯楽のパフォーマンスは高くないけど妙にまとまり良くできている佳作寄りの良作」
という感じでした。

とあるコメディラノベ某・新感覚魔法少女アニメのせいで、「ゾンビ」という語自体がやや悪乗りで用いられており
「これが流行ですか? はい、そんなの絶対おかしいよ」感漂うこの頃ですが、本作の妹ゾンビは
肉体半壊などのおぞましく悲痛な死に様から蘇ったり、人肉を喰らおうとしたりと、真っ当にゾンビになる点が
逆にユニークでした。
もう一つユニークなのは、全体的にコメディの体裁を採っておきながら、妹がゾンビとして蘇るという状況が
やったね生きててくれてよかったねーゲラゲラって感じではなく、ちゃんと不可思議で恐ろしい事であり、そして
重く悲しい代償のある奇跡である
という、現実的に至極当たり前の点を捨てなかった点。
この二点は個人的に意外なほど高く評価しています。
ごく個人的には、カラー口絵で妹が口じゅう体液まみれにしながらおいしそうにぱくついている棒状のアレの正体が
本文中で判明するという些細なギミックに驚いて笑ってしまいました。

以下格納部分にネタバレ全開で詳細なレビューをば。
 
 
 
その程度で何がまとまりかよって言われるでしょうが、本作はインパクトの強い部分よりむしろ
作中重きを置かれてない部分の理路というか情緒的なものが意外と堅実に構築されている気がするのです。
もっと広義的に言うなら、設定の諸所において「それはラノベだから許される」と言い切れる部分が
驚くほど少ない
のです。

完璧超人の妹が凡人のお兄ちゃんに偏愛するという不釣合いな関係には、仕事で忙しいせいで冷淡な
両親からの愛情不足による精神的自衛の念が籠もっているという動機がある。
また兄にしか心を許せないせいで学校ではむしろ両親のように、人当たりが悪く、才覚だけで生活してるような
人間になってしまう寂しい側面も構築されている。
かといって家族愛の何たるかを根こそぎ欠落しているわけでもないのは、両親に代わり守り育ててくれた祖母の功。

そんな華やかでも危うい妹が理不尽な事故で無残に落命するも、両親は仕事や世間体の都合で葬儀の進行すら
渋る始末。かくのごとき窮境で放り投げられた奇跡にすがって妹に怪しげな措置を行い、蘇らせてしまう。
生還?に一時喜ぶものの、次第に綻んでゆく妹との日常生活。
ついに妹が破綻し、処断しなければならなくなった時にも両親は全くの無能無益。
彼らに愛想を尽かした兄はついに「妹の代わりにお前らが死んでればよかったんだ」とまで母親に喚き、
兄妹二人にわだかまっていた心情をぶちまける。母親、子供の本音に打たれて反省。

そして兄として、人として為さなければならない処断をしっかりと自分の手で行う兄。

とまぁ、まるでシリアスな内容に見えるあらすじなのですが、こんな展開を幹にコメディにできている点も
なかなか巧みだし、何よりきょうびのラノベで「家族人物に突飛な個性を付けるなどのインパクトに頼らず、
現実感溢れる冷えた相関を構築している」という点はかなり評価したいのです。

ちなみに口絵であむあむしている棒状のモノとはぶった切った妹自身の生腕(大好物)という
スーパーキラホロ超オメガレアな食材だったりするのですが、これも設定を深読みすると

・腹が減って仕方なくなる
→ゾンビらしく生肉が大好物になるが、それでも満たされなくなってくる
→ゾンビ化が進行し、体細胞が異常活性して飢えが窮まり、人肉を食いたくなる
→人を襲う上に、反撃しても超代謝によって即再生する正真正銘のバケモノになる
→あれ? じゃあこの攻撃でたまたま切り落とした腕とか食べてみたら…
おいしい! おなかもいっぱい! 腕なんていくらでも再生するし、
 コレさえあればもう二度と人間を襲ったりしないよ!
→数日後、そこにはぎこちない一家団欒がスタートする一家の姿が!(ただし腕は食う)

と、一見「なんぞこれ」とダルっぽく突っ込みたくなる展開も、一応は筋道を立てた理由でつないでしまう
この丁寧さに好感を覚えてしまう。
ゾンビになってしまうという理由にも一応根拠はありますが、ここが一番くだらなズルかったのであえて割愛。

ホメ倒していますがアラもあります。主人公のキャラがけっこうぶれている、というか余所見が激しい。
女みたいな顔立ちなのに友人や教師にまで手が出るなどけっこう粗暴で、祖母の愛情を受けて一応まっすぐ育ったと
言及されるわりにヤンキー的振る舞いが目立つなど、あまり良いお兄ちゃんには見えないのはよろしくない。
まぁでもそういう欠陥っぷりが妹に継がれている点が少なくなく、それはそれで兄妹らしいという点では
またしても巧みではあるのですが、こうまで美点と粗が同居していると
単に作者が天然で執筆してるだけの気もして評価に困ります。

全体の起承転結がしっかりしておりさほど小ぢんまりともせずに上手く終わってるのですが、
その気があれば続編も出せそうな懐はある舞台なので期待してもいいのかなあ。
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Author:石川蔵人
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